1.「とまりぎ」を開設した理由

(1)子ども(小学生~高校生)の脳の健全な発達と、成人(大学生~高齢者)の認知機能維持と向上を願って
 昭和と平成、令和の3つの時代の30年を超える期間、私は小学校教員として、また、社会教育施設職員、教育委員会職員として、多くの子どもと出会い、関わってきました。
30年を超える教職員生活の後半時期にとても気になる事がありました。それは、子どもの変化のスピードがここ数年加速度的に速くなっていることです。いつの時代にも「なかなか覚えられない子」や「すぐに忘れてしまう子」、「落ち着きがない子」、「すぐに落ち込む子」、「自分に自信のない子」はそれなりに存在していましたが、平成の後半から令和にかけてそのような子どもが急激に増えてきていると感じていました。
その大きな理由は次の2つだと自分なりに考えています。
①子どもの脳(特に前頭前野)がしっかり発達する前に、タブレット、スマホ、パソコン、ゲーム機などの情報端末機器を乱用する生活習慣となっているからではないだろうか。
②子どもの脳(特に前頭前野)を刺激し発達させていく、音読、視写、計算などの、いわ ゆる「読み・書き・算」を養う家庭生活と学校生活が減ってきているからではないだろうか。
この2点のほかにも、生活習慣の乱れ(特に「ゲームの乱用」と「睡眠時間の乱れ」)が、子どもの脳の健全な発達を妨げているのだと考えています。
子どもの脳(特に前頭前野)がしっかりと健全に発達させる前に、タブレット、スマホ、パソコン、ゲーム機などの情報端末機器中心の生活と学習の繰り返しは、例えば『まだハイハイもできていない赤ちゃんを歩行器に入れて繰り返し歩行訓練をする。』や『小学生に42.195㎞のマラソンを走らせる。』と同じレベルの危険なことだと私は考えています。
「なかなか覚えられない子」や「すぐに忘れてしまう子」、「落ち着きがない子」、「すぐに落ち込む子」、「自分に自信のない子」は、おそらく情報端末機器の乱用と生活習慣の乱れにより前頭前野が発達しておらず、授業を理解するだけの『ワーキングメモリー(作業記憶、短期記憶)』、「読解力」が低下している可能性があります。その結果、「わからない」、「できない」「すぐに忘れてしまう」が積り、結果として『自己肯定感』も低下しているのだと考えています。
これからの教育現場では、タブレットや電子黒板などの端末機器を多用する教育が主流となっていきます。タブレットや電子黒板などの端末機器中心の教育活動を有効に効果的に進めていくためには、子どもたちの脳が健全に発達していることが大前提となります。しかし、現在の小・中学校の指導内容は昭和時代のように「読み・書き・算」にじっくりと時間をかけられるカリキュラムではなく、膨大な指導内容を時間内に子どもたちに理解させていかなければならず、先生方も日々ゆとりがなく、前頭前野を刺激するといわれている音読、視写、計算などのいわゆる「読み・書き・算」を扱う時間的余裕が全くなくなっています。
「とまりぎ」では、脳が成長する小学校期から中学校期にかけての『黄金期』に校種や学年、学力、年齢に関係なく「簡単にできる」、「誰でもできる」、「短時間でできる」、「続けることができる」をキーワードに、読解力とワーキングメモリー(作業記憶)のアップを図っていく施設です。具体的な活動内容は 「音読」と「計算」、「視写」、「体ほぐし運動 (リズム体操)」、「パズルゲーム」、「コグトレ」の6本柱となります。なかなか学校に足が向かないお子さんや、成人(学生、高齢者など)の方の認知機能維持と向上のためにもご利用できる教室です。

(2)子ども(小学生~高校生)と保護者のサポートを願って
 私が出会って来た保護者の方は、どなたも一生懸命な方で、子どもの将来の幸せを心から願っている方ばかりでした。一方で、「子育てがうまく行かない」。私はダメな親だ、「子どもが不登校なのは自分のせいだ」など、自分を責める多くの保護者の方と出会ってきました。そんな保護者の方の少しでもお役に立てればと「とまりぎ」に教育・子育て相談室も設けました。
教育・子育て相談室では、保護者とお子さん(小学生~大学生、専門学生)からの、各種相談を受け付け、必要に応じてSST(ソーシャルスキルトレーニング)も取り入れ利用者の方の意思決定と行動選択を図り、自己肯定感を高めるカウンセリングルームです。

2.「とまりぎ」が考える脳力と自己肯定感

(1)脳の健全な発達(脳力)
 急激に進む「情報化と人工知能(AI)」は私たちの暮らしに多くの恩恵をもたらしてくれています。その反面、子どもの健全な発達に必要な『3つの間(時間・空間・仲間)』の減少を要因とした、遊び場や異年齢集団での遊びがどんどん失われ、子どもの遊びが携帯型ゲームに代表される『身体を動かさない』、『五感を刺激しない』、『友との良好な関りが少ない』遊びが中心となっています。
スマホやゲーム、パソコンなどの急速な普及により、その普及の速度に付いていけずに混乱 し続けている子どもや、情報機器から得た情報で「理解した」、「わかった」と勘違いしている子どもが増えていることも気にかかります。
脳の働き、すなわち“脳力”には、「短期記憶力」「集中力」「注意力」「基礎思考力」「意欲」という5つの働きがあります。これらの5つの脳力には、脳の異なる部位が深く関わっており、脳力ごとに各部位を刺激していくことで、脳機能を総合的に高めていくことができます。
注)「とまりぎ」では、「ワーキングメモリー(作業記憶、短期記憶)」と「読解力」の2つを「脳力」と表しています。

(2)自己肯定感
 自己肯定感とは、例えば「私には存在価値がある」、「私は必要な存在」、「大切な人間」、「生きていていいんだ」、「私は愛されているんだ」、「私は守られているんだ」、「私は私でいいんだ」、「このままの私で良いんだ」などといった「自己肯定感」、「自尊感情」、「自己有能感」、「自己効力感」を含めたもので、「自信」や「自尊心」と同じような意味で使われてもいます。
自己肯定感は、一生を左右する心の土台であるといわれ、とても大切なものですが日本の子どもたちは諸外国の子どもたちと比べ、自己肯定感が低いことが各種調査で判明しています。
自己肯定感の低さは、伸びる子と伸び悩む子のちがい大きな要因の1つともされる『非認知能力』の育成にも大きく影響を与えていきます。

3.今後予想される時代と精神科医や脳科学者らの憂い

 子どもたちがこれから迎える世の中は『人生100年時代』となることが確実視されています。 それと同時に、少子高齢化社会やデジタル社会、AI社会、グローバル社会へと急激に変化して行くことも併せて確実視されています。そのような社会は、答えが予測できない社会、答えが1つではない社会、過去の経験・常識が通用しない社会、学校だけでは「学び」が完結しない社会、学び続けないと生き残れない社会、失敗を避けることができない社会となっていき、ますます予測困難な先行き不透明な時代となっていきます。
スウェーデンの精神科医、アンデッシュ・ハンソンさんは、「インターネットやスマホを始めとする、急激な社会の変化に脳がついていけていない。その結果、孤独感が増し所属感や満足感の喪失と精神疾患の増加をもたらしている。世の中の急激な変化に脳がパニック状態となっている。」と、今後の社会に対して警鐘を鳴らしています。
また、学童期の子どもにとって、タブレットなどの端末だけを使用した学習では、学童期に大きく成長する脳が健全に成長しない危険性も指摘されています。対話型人工知能(AI)やチャットGPTをはじめとした『生成AI』の利用が急激に拡大していく中、「脳トレ」の第一人者で、全国に脳トレブームを巻き起こした、東北大学の加齢医学研究所所長、スマート・エイジング国際共同研究センター長の川島隆太教授は、「MRIで子どもたちの脳の発達を調べる研究では、スマホやタブレットを使う習慣が多い子どもたちは脳の発達が止まることがはっきり証明されています。実際、3年間にわたりほぼ脳が発達しない状態が続いているケースもあるのです。大人の脳については、いま調査しているところですが、東北大学の学生を対象に調べたところ、子どものケースと同様の影響が確認されています。スマホを頻繁に利用する人ほど、感情のコントロールが難しくなったり、うつ状態になりやすかったりするのです。」と、2019年に産業能率大学のインタビューで語っています。
  また、東北大学の加齢医学研究所の榊浩平助教は、「スマートフォンやデジタルデバイスは脳を使わず、依存症のリスクが高まり、思考や理解を阻害する恐れがある。小学校高学年から中学、高校にかけてどんどん育つ前頭前野の機能が一番影響を受ける。これからの時代を生きる素養として、前頭前野が担っている思考力や創造力、コミュニケーション能力を養っていくことで、子どもたちに将来どのような世界が訪れたとしても対応できるのではないか。」と、2023年の毎日新聞のインタビューで語っています。

代表者紹介

(1)氏名太田武邦 ・・ 昭和34年9月、岩手県九戸郡種市町(現洋野町)生まれ。洋野町中野在住
(2)職歴①勤務場所(学校)久慈市立久慈湊小学校、久慈市立夏井小学校、盛岡市立松園小学校、種市町立中野小学校、岩手町立沼宮内小学校、久慈市立久慈小学校、岩泉町立国見小学校、洋野町立大野小学校、洋野町立種市小学校
②勤務場所(学校以外)八戸市シルバー人材センター、岩手県立県北青少年の家、岩手県教育委員会久慈教育事務所、洋野町教育委員会
(3)主な免許・資格小・中学校、高等学校教員免許
学校心理士、家庭療法カウンセラー、チャイルドカウンセラー
社会教育主事、防火管理者、日本陸上競技連盟公認A級審判員、簿記会計2級
(4)今まで行った主な講演題「就学に向けて幼少期に大切な子育て」
「『黄金期』に脳を育む子育て」
「伸びる子と伸び悩む子のちがい」 ~自己肯定感、愛着、非認知能力の理解を通して~
「伸びる子の家庭学習と伸び悩む子の家庭学習」
「家庭学習を通して考える『黄金期』の子育て」 など